氏名:原田 夢見 (はらだ ゆめみ) P.N:夢見 瑠美 (ゆめみ るみ)

性別:女 年齢:26 生日:2月28日 体格:170cm/48kg 職業:専業作家 担当:


作品ジャンル

幻想小説/エッセイ(回顧録)

「平熱」

「病弱、寝台の上に見る夢は、いつの夜も平熱にはあらざりし奇怪の光画」。紙の上をすべりだす疚しい言葉たち、朽ち果てた巨人の腕に攫われる体、太陽は融け、月は踊る、鉛の風が飛来する窓のある光景────夢見のつける「平熱の夢日記」をベースに形成された、ともすれば不可解な、境のない風景を目眩く流転する短編。雑誌「■■」の初掲載作。

「不驚異」

「知覚するすべての物たちに、驚くべきものは何ひとつとしてない」。世に有り得ざる「不驚異」を信条とする「私」の身辺には、常に何者かが入れ替り立ち替り現れる。「私」の情動を観察するもの、「私」を驚異せしめようとするもの、ただ人として扱うもの、そうでないもの、何をも知りもしない猫たち。何事が起ころうとも平穏無事、心揺することなど何ものもないとばかりの「不驚異」の心理を、内外の視点から描き上げる実験作。

「おとうと」

自分を慕う歳の離れた弟について、彼が生まれてから死ぬまでのわずか七年と少しを振り返る、静かな回顧録。 全体はごく短いもので、体調不良が顕著になり始めた二十九歳の春から書き溜められたと思しい。前書きに曰く、「どこにも出さないつもりの遺作」として書かれた作品。


都会から遠く離れた病院の、入院棟の屋上から投身したと見られる。

享年二十九。その直前、生まれついての心疾患に関し、緩慢な悪化・合併症の所見と手術の打診があったというが、夢見はこれを「なるべく自然に生きて死にたい」と拒否。しかし検査入院中に病室を抜け出し、白昼堂々と自死を遂げる。

地上五階に相当する高さから仰向けに落下した遺体。頭蓋骨は砕け、腕脚は捻転し、薄く開いた目からは涙の代わりに血が流れた。胸元には急拵えの遺書がしまわれ、口元は穏やかに微笑んでいたという。

<aside> <img src="/icons/pencil_gray.svg" alt="/icons/pencil_gray.svg" width="40px" /> どうせなら、斗志ちゃんが最期に見た空を、私も見てみたいと思いました。 もしかして、軽い命の私なら、風船みたいに、風に浚われていけるかも。

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人物

生気のない女。体力も顔色も乏しい。先天性の心疾患を抱えており、家からほとんど出ない生活を送っている。 生活においては自ら公言するほどの不器用。できることから始めるつもりで手を出した作家業で、ようやくいくつかの小品が小さな雑誌に載るようになり喜んでいる。朝謡出版に兄が勤務しており、簡単な校正と文章の指南を受けている。 近頃、家族の反対を振り切り、家事手伝いをひとり伴って首都圏に出てきたようだ。

幼い頃の夢見が知る世界といえば、学校の他は、兄と弟の目が見たものばかりだった。外遊びがしたくても、走ることはおろか、学校までをひとりで歩くことさえままならない夢見の身体では、誰にもついていけはしなかった。

そんな夢見を気にかけたのは、七歳下の弟だった。夢見が中学に上がる頃になると、弟は兄に着いて、しばしば外を駆け回った。今日は何があったとか、何を見つけたとかいう話を聞くようになったのは、いつ頃からだっただろうか。

<aside> <img src="/icons/pencil_gray.svg" alt="/icons/pencil_gray.svg" width="40px" /> かわいい弟だった。夢ねーね、夢ねーねと、私を飽きもせず呼んでくれる。 強い動悸とチアノーゼの中、生きることを悲観せずにいられたのは、弟がいたからだ。小さな弟の語る世界の広さは、どんな夢よりも夢らしく、素晴らしいと思った。「大きくなったら連れてってあげる」と言う弟の言葉が、私にとっては何よりも嬉しくて、大事に大事に抱えていた。

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悲しい出来事は、夢見が十四歳の夏に起こった。